保護者の方へ
お子さまが「算数がにがて」と言ったら
「算数きらい」「どうせできないもん」「ぼく、算数がにがてだから」。お子さまの口からこんな言葉が出ると、胸が痛みますね。おうちの方ご自身が子どものころに同じ思いをしていたなら、なおさらです。でも、算数への気持ちは変えていくことができますし、まわりの大人にできることはたくさんあります。このガイドでは、算数への不安がどんな形で表れるのか、そしておうちで何ができるのかを紹介します。
算数への不安とは
算数の問題を前にしたときに感じる心配やあせり、こわさを、ここでは算数への不安と呼びます(「数学不安」と呼ばれることもあります)。これは、算数ができないこととは違います。本当は力があるのに、不安が強いせいで実力を出せない子もいるのです。あせると頭が真っ白になり、いつもは言える九九が出てこなくなったり、文章題の筋道を追えなくなったりします。すると「やっぱりできない」と思いこみ、ますます不安になる。この悪循環を断ち切ることが大切です。
こんなサインはありませんか
- やってみる前から「できない」「わからない」と言う。少しやってみて、あっさりあきらめてしまう。
- 算数の宿題の時間や、単元テストのある日に、おなかが痛くなる、泣く、かんしゃくを起こす。
- 早く終わらせたくて急いで書きなぐる、あてずっぽうで答えを書く。
- いつもならできる問題で、急に手が止まる。とくに時間をはかられているとき。
- 算数を避ける。計算ドリルを「忘れた」と言う、算数の教科書を出したとたんにトイレに行きたくなる。
- 友だちとくらべる。「みんな、もう終わってた」「○○くんは塾でもっと先のことをやってるんだって」。
だれにでも調子の悪い日はあります。気にかけたいのは、こうしたサインが何度もくり返されるときです。
小学校で不安を感じやすい場面
小学校の算数には、子どもが緊張しやすい場面がいくつかあります。前もって知っておくと、声のかけ方を考えやすくなります。
- 九九の暗唱。2年生では、九九を一人ずつ先生の前でとなえて確かめてもらうことがよくあります。人前で話すのが苦手な子や、途中でつかえてしまった経験のある子には、大きなプレッシャーになることがあります。このチェックは全国共通のテストではなく、クラスでの練習の一つです。
- 単元テストの点数。単元が終わるたびに持ち帰る100点満点のテストは、子どもにも大人にも点数が目に入りやすいものです。点数で「できる・できない」を決めつけず、どこでまちがえたのかを一緒に見るきっかけにしましょう。
- 時間をはかる計算練習。計算カードや百ます計算などで、タイムをはかることがあります。記録がのびるのを楽しめる子もいますが、自信のない子には、時計そのものが不安のもとになることもあります。
- 友だちとの比較。塾に通っている子や中学受験の勉強をしている子が、学校では習わない解き方や問題を話題にすることがあります。中学受験の算数は教科書の内容よりずっと先まで進むもので、学校の算数とは別ものです。中学受験をするかどうかは家庭ごとの選択で、多くの子は受験をせずに地域の公立中学校へ進みます。
学校が見ているのは、点数だけではありません
通知表の算数は、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」という3つの観点で評価されます。3つ目の観点では、あきらめずに考えようとしているか、学習をふり返って次に生かそうとしているか、といった姿も見られています。また、多くの教室では、まず一人で考え、そのあとでみんなの考えを出し合う授業が行われていて、まちがいもクラス全体で考えを深めるきっかけとして大切にされます。
つまり、まちがいをこわがらずに取り組めるよう支えることは、算数の勉強とは別のことではなく、算数を学ぶことそのものの一部なのです。
ことばを変えてみる:「まだ」
子どもは、算数ができるかどうかは生まれつき決まっていると思いこみがちです。「できる子」と「できない子」がいる、という考え方です。でも実際には、だれでも練習すれば少しずつできるようになります。むずかしいと感じるのは学んでいる途中だからで、力がない証拠ではありません。学校でも、この考え方を子どもたちに伝えようとしています。
おうちでかける言葉で、それを後押しすることができます。「まだ」という一言を足してみてください。
- 「分数がわからない」は、「分数はまだわからない」に。
- 「7の段がおぼえられない」は、「7の段はまだだけど、2の段と5の段はもう言える」に。
ほかにも、こんな言葉が助けになります。
- 「むずかしいね。むずかしいと感じるときは、頭がきたえられているときだよ」
- 「ここまでならできそう、というところはどこかな?」
- 「まちがえたところは、これから練習するところを教えてくれているんだよ」
- 「前は『いくつといくつ』もむずかしかったよね。いまはできるようになったでしょう」
- 「よく考えたね」(答えが合っていたかどうかより、考えた道すじをほめる)
反対に、悪気はなくても避けたい言葉もあります。「お母さんも算数ダメだったから、しかたないよ」、「こんなの簡単でしょ」(簡単なはずなのにできなかったら、お子さまはどう感じるでしょう)、「なんでわからないの」「早くして」、そして「○○ちゃんはもうできるのに」のような、ほかの子とくらべる言葉です。
冷蔵庫に「できるようになったことリスト」をはってみてください。お子さまがむずかしかったことをできるようになるたびに、日付と一緒に書き足していきます(「12月5日 7の段を最後まで言えた」など)。「算数なんてできない」と言い出したら、そのリストを一緒にながめてみましょう。
おうちの方ご自身の算数への気持ち
算数や数学に苦手意識を持っている大人は少なくありません。習ったときの教え方が合わなかった、ということもよくあります。恥ずかしいことではありませんが、子どもは大人の言葉や態度をよく見ています。「お父さんも算数はさっぱりだった」と聞けば、「うちは算数ができない家なんだ。がんばってもむだだ」と思ってしまうかもしれません。
次のようなことを心がけてみてください。
- 自分の言葉に気づく。「算数はまったくダメ」を、「子どものころは算数が苦手だったけど、いまも少しずつ学んでいるよ」に言いかえてみましょう。
- 算数を使っている姿を見せる。ゆっくり考えてもいいのだと伝わります。「ちょっと待ってね。6こ入りを3パック買うから、6 × 3 で18こだね」。
- 一緒に考える。「うーん、わからないな。一緒に考えてみようか」は、子どもにとってとても心強い言葉です。
- ご自身の自信も育てる。いまの算数の教え方では、お子さまが学校で使っている考え方や筆算の書き方を紹介しています。大人のための毎日の算数パズルで、数と仲よくなるのもおすすめです。
プレッシャーの少ない練習と遊び
不安の強い子には、テストのように感じない算数をたくさん経験させてあげることが大切です。時間をはからない、点数をつけない、だれかに見られていない。算数を「安心できるもの」、できれば「楽しいもの」と感じられるようにするのがねらいです。
- すごろくやカードゲーム。すごろく、トランプ、UNOなどには、だれも「算数」と呼ばないまま、数を数えたりたしたりする場面がたくさんあります。トランプの1から9までのカードを伏せて並べ、2枚めくって合わせて10になったらもらえる「10をつくる神経衰弱」は、1年生の「いくつといくつ」の練習にもなります。
- サイコロ遊び。サイコロを2つふって出た目をたし、自分の点数に足していきます。先に50に届いた人の勝ちです。九九を習った子なら、2つの目をかけ算して、ゴールを100にしてもよいでしょう。
- お子さまに先生になってもらう。学校で習ったことを教えてもらいましょう。説明する側に立つのは、問題を出されて答えるのとはまったく違う体験です。
- 暮らしの中の算数。料理、買い物、おでかけの計画など、目的のある場面で数を使います。暮らしの中の算数にアイデアをたくさん集めました。
- できることから始める。まずはもうできることに取り組み、そこに小さな一歩を足していきます。
- はじめは時計を使わない。日本には、九九を時間内に答える全国テストはありません。計算カードや百ます計算のスピードは、自信がついてから少しずつ上げていけば十分です。時間をはかるなら、くらべる相手はほかの子ではなく、きのうの自分です。
パズルも、最後まで解かなければいけないというプレッシャーがなければ、よい練習になります。行きづまったあとで答えがひらめく瞬間は、算数のいちばんの楽しさの一つです。
テストや九九のチェックが心配なとき
テストそのものが不安のもとになっているなら、しくみを知ることで気持ちが楽になることがあります。通知表は単元テストの点数だけで決まるものではなく、授業での様子なども合わせて、3つの観点から評価されます(書き方は学校によって違います)。6年生の4月にある全国学力・学習状況調査も、成績や中学校への進学には関係しません。くわしくは算数のテストと評価で説明しています。
九九の暗唱が心配なら、おうちでは一つの段を、ゆっくり、まちがえても笑って言い直せる雰囲気で練習しましょう。おうちの方がとなえ役になってわざと一か所まちがえ、お子さまに見つけてもらうのも楽しい練習です。くわしくは九九のおぼえ方・練習のしかたにまとめています。
担任の先生に相談したほうがよいとき
担任の先生には、いつ相談してもかまいません。連絡帳や個人面談で、気軽に伝えてみてください。とくに、次のようなときは早めに相談しましょう。
- 不安が何週間も続いている、またはだんだん強くなっている。
- 算数のある日に、学校へ行きたがらない。
- 宿題を短くしても、泣いて終わることがよくある。
- 気持ちの問題だけでなく、算数の内容そのものにつまずいていると感じる。
先生は、おうちとは違う、教室でのお子さまの姿を見ています。授業中の様子を聞くことで、ヒントが見つかることもたくさんあります。学校によっては、少人数での指導など、算数のサポートを用意していることもあります。気持ちの面が心配なときは、学校のスクールカウンセラーに相談することもできます。
ごく一部の子には、数の感覚や計算を身につけることに、特有の、長く続くむずかしさがあります。学習障害(LD)のうち、数や計算に関わるものは「算数障害」や「ディスカリキュリア」と呼ばれます。十分に手助けをしても、数の基本がとてもむずかしいようなら、担任の先生に相談してみてください。学校には特別支援教育コーディネーターの役割を担う先生がいて、必要に応じて一緒に考えてくれます。通級指導教室など、支援の形は学校や地域によってさまざまです。
よくある質問
いいえ。算数が得意な子にも、苦手な子にも、不安は起こります。不安があると頭が働きにくくなるので、本当の力よりも低い結果になりやすいのです。
その日はやめてかまいません。連絡帳に一言書いて、担任の先生に伝えておきましょう。そのうえで、宿題の量ややり方について先生と相談してみてください。
九九は2年生のあいだだけでなく、3年生のかけ算やわり算でもくり返し使うので、使ううちに少しずつ身についていきます。言えた段をほめて、つかえた段は短い時間で何度か練習しましょう。先生がどのように確かめているのか気になるときは、連絡帳で聞いてみてもよいでしょう。
はい。落ち着いた支えと、小さな「できた」の積み重ね、おうちと学校での前向きな言葉があれば、ほとんどの子は少しずつ自信をつけていきます。
インディと練習しよう
Beequation Kidsでは、計算の練習がハニカムパズルになります。お子さまがつまずいたときは、ミツバチのインディがヒントを出します。広告なし、データ収集なし。