先生向け
考える力を育てる問題解決の授業
小学校学習指導要領の算数の目標は、「数学的な見方・考え方を働かせ、数学的活動を通して」、数学的に考える資質・能力を育てることです。数学的な見方・考え方とは、数や形とその関係に目をつけ、根拠をもとに筋道を立てて考え、わかったことをまとめたり広げたりしていくことです。数学的活動とは、日常の場面や算数の中から問題を見つけて解決し、その考えを具体物や図、数、式を使って説明し合う活動です。このページでは、筋道を立てて考え、「どうしてそう言えるの?」に答えられることを考える力、知っていることを初めて出会う場面に使うことを問題解決と呼びます。
考える力を育てるのに、特別な授業は要りません。毎日の発問と、考えを言葉にする習慣の中で育っていきます。ここで紹介するアイデアは、どの単元、どの学年にも取り入れられます。
問題解決型の授業の流れ
多くの学校の算数の授業は、次のような流れで進みます。呼び方や時間配分は学校やクラスによって違いますが、45分の授業での目安をそえておきます。
- 問題との出会いと「めあて」(約5分):問題を示し、これまでに習ったこととのちがいから「今日は何を考えるのか」をはっきりさせて、めあてを板書します。
- 見通し(約5分):「どんな方法が使えそう?」「答えはだいたいどのくらい?」と問いかけ、方法と答えの見通しをもたせます。手が止まりそうな子にとって、大切な手がかりになる時間です。
- 自力解決(約10分):まず一人で、図や式、言葉を使ってノートに考えを書きます。先生は机間指導で一人ひとりの考えを見取り、練り上げで取り上げる考えとその順番を決めておきます。
- 練り上げ・話し合い(約15分):いくつかの考えを発表し合い、比べます。「似ているところは?」「どの考えがいちばんわかりやすい?」と問いかけ、考えと考えをつないでいきます。
- まとめ(約5分):子どもたちの言葉を使って、今日わかったことを短くまとめます。
- 練習と振り返り(約5分):同じ考え方を使う問題を解き、わかったことや次に考えてみたいことを書きます。
たとえば、4年生の面積の単元でよく扱う「L字形の面積」です。たて7 cm、横9 cmの長方形から、右上のたて3 cm、横5 cmの部分を切り取った形の面積を求めます。公式がそのままでは使えない形なので、いろいろな考えが出てきます。
- たてに2つに分ける:7 × 4 = 28、4 × 5 = 20、28 + 20 = 48
- 横に2つに分ける:4 × 9 = 36、3 × 4 = 12、36 + 12 = 48
- 大きな長方形からひく:7 × 9 = 63、3 × 5 = 15、63 − 15 = 48
練り上げでは、「3つの考えの似ているところは?」と問いかけます。どれも「面積を求められる長方形をもとにしている」ことに子どもたちが気づけば、それがそのまま「長方形をもとにすれば、L字形の面積も求められる」というまとめになります。振り返りに「ほかの形でもできそう」と書く子がいれば、考えは次の時間へと広がっていきます。
考えを引き出す発問
次のような問いかけを教室に掲示したり、教卓にメモを置いたりして、口ぐせになるまで使ってみてください。
- 何か気づいたことはある? どんなきまりがありそう?
- 似ているところは? ちがうところは?
- どうしてそう考えたの? どうしてそう言えるの?
- ほかの考え方はある? どの考えがいちばん簡単?
- もし数を変えたら、どうなるかな?
- いつでも言えるかな? ほかの数でも確かめてみよう。
- たとえば? 例をあげて説明できる?
- まちがいを見つけよう。どこで考えが分かれたのかな?
- ○○さんの考えを、ほかの人が説明できるかな?
最後の問いは、練り上げでとくに効果があります。ほかの子が自分の言葉で言い直すことで、一人の考えがクラス全体のものになっていきます。考えを比べるときに、「はやく・かんたん・せいかく」のような合言葉を使っているクラスもあります。
「どうしてそうなるの?」を説明しよう
子どもたちがすでに知っていることを取り上げ、それが正しいわけを友だちに説明させます。「覚えているから」では説明になりません。ブロックや図、数直線を使った説明も、りっぱな根拠です。
- 1年:7 + 8 = 15 になるわけ。7 + 7 = 14。8は7より1大きいから、答えは14より1大きい15。さくらんぼ計算で「7はあと3で10。8を3と5に分けて、10と5で15」と説明する子もいます。
- 2年:6 × 7 = 42 になるわけ。6 × 6 = 36。かける数が1ふえると答えは6ふえるので、36 + 6 = 42。
- 3年:23 ÷ 4 の答えが「5 あまり 3」になるわけ。4 × 5 = 20、20 + 3 = 23 で、あまりの3はわる数の4より小さいから。
- 4年:5分の3(⅗)が2分の1(½)より大きいわけ。同じ長さのテープを2等分したものと5等分したものを並べると、⅗のほうが長い。大きさの等しい分数を使って、½ = ⁵⁄₁₀、⅗ = ⁶⁄₁₀ と比べることもできる。
いつでも言えるかな?(正しい?正しくない?)
文を1つ板書し、正しいか正しくないかを決めて、わけを説明させます。○になるものと×になるものをまぜて、答えのパターンを読まれないようにしましょう。
| 学年 | 板書する文 | 答え |
|---|---|---|
| 年長 | 5このおはじきを広げてならべたら、数がふえた。 | ×。広げても5このまま。場所を広くとるようになっただけです。 |
| 1年生 | 7 + 3 と 3 + 7 は、答えが同じ。 | ○。どちらも10。たされる数とたす数を入れかえても、答えは変わりません。 |
| 2年生 | かける数が1ふえると、答えはかけられる数だけふえる。 | ○。3 × 4 = 12、3 × 5 = 15 で、3ふえます。九九表に見つかるきまりの一つです。 |
| 3年生 | わり算のあまりは、わる数より大きくなることがある。 | ×。あまりがわる数と同じか大きければ、商をもう1大きくできます。あまりは、いつもわる数より小さくなります。23 ÷ 4 は「4 あまり 7」ではなく「5 あまり 3」。 |
| 4年生 | 0.65 は 0.7 より大きい。けたの数が多いから。 | ×。0.7 は 0.1 が7こ。0.65 は 0.1 が6こと 0.01 が5こなので、0.7 のほうが大きいです。 |
| 5年生 | かけ算の答えは、いつもかけられる数より大きくなる。 | ×。5 × 1 = 5、5 × 0 = 0、5 × 0.5 = 2.5。かける数が1より小さいと、答えはかけられる数より小さくなります。 |
| 6年生 | わり算の答えは、いつもわられる数より小さくなる。 | ×。6 ÷ ½ = 12。6の中に½は12こ入ります。わる数が1より小さいと、商はわられる数より大きくなります。 |
まちがいを見つけよう
まちがいのある答えを見せて、どこがちがうのかを見つけ、わけを説明し、正しく直させます。自分のまちがいを直すより気持ちの負担が小さく、つまずきやすいところを先回りして扱うことができます。
- 2年:52 − 27 の筆算で、答えを35と書いた。一の位で2から7がひけないので、7から2をひいてしまっています。十の位から1くり下げて 12 − 7 = 5、十の位は 4 − 2 = 2 で、答えは25。たしかめ算:25 + 27 = 52。
- 3年:¼ + ¼ = ²⁄₈ 4分の1(¼)が2こで、4分の2(²⁄₄)です。分母の4は「1を4等分した」ことを表していて、たしても1つ分の大きさは変わらないので、分母はたしません。
- 4年:824 ÷ 4 の筆算で、商を26と書いた。8 ÷ 4 で2をたて、2をおろすと、2 ÷ 4 では商がたちません。ここで十の位に0をたてるのを忘れて、そのまま4をおろしています。正しくは206。たしかめると 4 × 26 = 104 で824になりませんが、4 × 206 = 824 です。
- 5年:0.4 × 0.3 = 1.2 4 × 3 = 12 まではよいのですが、小数点の位置がちがいます。かけられる数とかける数の小数点より下のけた数をあわせると2けたなので、0.12。「0.4の0.3倍は0.4より小さくなるはず」と見積もれば、1.2がおかしいことに気づけます。
まちがいは「ほかの人のもの」として見せましょう。「別のクラスの子がこう書いていたよ」「インディがこうまちがえちゃったんだって」と見せると、子どもたちは喜んで直そうとします。同じまちがいをしそうだった子も、自分が指摘されたとは感じずに学ぶことができます。
答えがいくつもある問題
答えが1つではない問題や、答えは1つでも求め方がいろいろある問題は、どの子も取りかかりやすく、早くできた子にはさらに考える先があります。
- どの学年でも:答えが12になる式をつくろう。年長さんなら「10と2で12」、1年生なら 10 + 2 や 15 − 3、高学年なら 48 ÷ 4 や 48の25%、6年生なら ⅔ × 18 など。
- 1年:2つのサイコロの目をたして6になるのは、どんな組み合わせ? 1と5、2と4、3と3。5と1、4と2を別に数えれば5通りです。どちらの数え方がよいかを話し合うこと自体が、考える力を使う時間になります。
- 3年:駄菓子屋で、1こ20円のあめと1こ50円のガムをどちらも1こ以上買って、ちょうど210円にしたい。それぞれ何こ買えばよいかな? あめ8ことガム1こ(160 + 50 = 210)、または、あめ3ことガム3こ(60 + 150 = 210)。あめだけの代金は20円、40円、60円…と、10円玉が2こずつふえる金額になります。210円は10円玉21こ分なので、10円玉5こ分のガムを1こ、3こ…と奇数こ買う必要があります。5年生で学ぶ偶数・奇数につながる見方です。
- 4年:まわりの長さが20 cmの長方形があります。辺の長さは1 cm、2 cm…のように整数のcmです。面積は何cm²になるかな? たてと横をあわせると10 cmなので、1 cmと9 cm、2 cmと8 cm、3 cmと7 cm、4 cmと6 cm、5 cmと5 cmで、面積は9、16、21、24、25 cm²。いちばん広いのは1辺5 cmの正方形です。ここから「正方形は長方形のなかまと言えるの?」という話し合いも生まれます。
文章題はテープ図と数直線で
文章題で「あわせて」「全部で」とあればたし算、「のこりは」「ちがいは」とあればひき算と、言葉だけで式を決めてしまう子がいます。けれども、「公園に子どもが何人かいました。あとから14人来たので、全部で23人になりました。はじめに何人いましたか」は、「全部で」とあってもひき算(23 − 14 = 9)です。言葉を拾うのではなく、場面を図に表して、どこが全体でどこが部分かを確かめる習慣をつけましょう。2年生ごろからはテープ図、高学年では線分図や数直線も使います。テープ図は、「何倍」の問題でも力を発揮します。
5年生の割合では、2本の数直線を上下に並べ、もとにする量と「1」、くらべる量と割合を対応させる図がよく使われます(図の形や呼び方は教科書によって違います)。
図の上で「1にあたるのは1,200円」と確かめておくと、「くらべる量 = もとにする量 × 割合」という式の意味がはっきりします。1200 × 0.3 = 360 で値引きされる金額を出し、1200 − 360 = 840(円)と求める子もいるでしょう。2つの求め方が同じ答えになることを確かめ合うのも、よい練り上げになります。
6年生では、分数で表された割合も同じように考えます。「持っていたお金の5分の2(⅖)を使ったら、のこりが1,800円になりました。はじめにいくら持っていましたか」。テープを5等分して2つ分を使ったお金にすると、のこりの3つ分が1,800円なので、1つ分は 1800 ÷ 3 = 600(円)、全体は 600 × 5 = 3000(円)です。たしかめ:3,000円の⅖は1,200円で、3000 − 1200 = 1800(円)。
式・図・言葉で説明するノート
答えはわかっても、そのわけをうまく言えない子はたくさんいます。ノートの書き方と話し方の型を少しずつ示していくと、考えを言葉にしやすくなります。多くのクラスでは、ノートを次のような流れで書きます。
- めあてと問題
- 自分の考え:図・式・言葉の3つで書きます。式だけで終わらせず、なぜその式になるのかを一言そえます。
- 友だちの考え:なるほどと思った考えを、友だちの名前といっしょに書きます。
- まとめと振り返り
文章題の答えは、低学年では「しき」と「こたえ」、中学年からは「式」と「答え」に分けて書き、「答え 840円」のように単位をつけます。「代金 = 1このねだん × 買う数」のようなことばの式を先に書かせると、どの数をどこに入れるのかを考える習慣がつきます。
説明の型(話型)の例です。教室に掲示し、まず先生が使ってみせて、話すときにも書くときにも使えるようにしていきます。
- 〜だから、〜です。
- まず〜、次に〜、だから答えは〜です。
- 〜とは言えません。なぜなら、〜だからです。
- ○○さんの考えに付け足しで、〜。
- ○○さんの考えと似ていて(ちがっていて)、〜。
- たとえば〜のときも、同じように〜。
- 見積もりが〜だったので、この答えは正しそうです。
いきなり全体で発表させるより、まずペアで話してから全体で発表するほうが、多くの子が安心して話せます。友だちと考えを伝え合うことは、学習指導要領が大切にしている「主体的・対話的で深い学び」の「対話的」にあたる部分です。
全国学力・学習状況調査に見られる「説明する問題」
6年生が毎年4月に受ける全国学力・学習状況調査の算数では、答えを選んだり数を書いたりするだけでなく、わけを言葉や式を使って書く問題が出されます。身のまわりの場面で算数を使い、自分の考えを書き表す力が見られているのです。成績や進学には関係しない調査ですが、ふだんの授業で次のような問いに取り組んでおくと、子どもたちは落ち着いて書けるようになります(このページのオリジナルの例です)。
はるとさんは「1,200円の3割引きと、1,200円から300円引きでは、3割引きのほうが安い」と言いました。はるとさんの言っていることは正しいですか。わけを言葉や式を使って書きましょう。
答えの例:正しい。3割引きは 1200 × 0.3 = 360 で360円引きになり、代金は840円。300円引きの代金は900円。840円のほうが安いから。
見るときは、「結論(正しい)」「根拠になる数や式(360円引き、または840円と900円)」「比べた結果」の3つがそろっているかに注目すると、子どもに何が足りないのかを伝えやすくなります。
よくある質問
考える力は、なぜそう言えるのか、なぜその方法でよいのかを、筋道を立てて説明する力です。問題解決は、知っている算数を初めて出会う場面に使うことです。2つは重なり合っていて、問題をうまく解決するには、ほとんどの場合、途中で考える力が必要になります。
はい。どの子も、自分が確かにわかっている内容については、考えて説明することができます。数を小さくしたり、ブロックや図を使ったりして、計算の大変さが考えることのじゃまをしないようにしましょう。苦手な子の素朴な考えが、練り上げで大切な役割を果たすこともよくあります。
見通しの段階で、使えそうな方法(図をかく、数を小さくして考える、表にする)をクラスで出し合っておくと、手がかりになります。ヒントカードを用意したり、「途中まででもいいから書いてみよう」と声をかけたりするのも効果があります。
すべての考えを発表させる必要はありません。机間指導で考えを見取り、比べることでまとめにつながる考えを2つか3つ選んで、発表の順番を決めておきます(意図的指名)。練習問題は、次の時間の導入に回してもかまいません。
観点別評価のうち、主に「思考・判断・表現」で評価します。ノートの記述、授業での発言、単元テストの活用問題など、いくつかの材料を合わせて見ると、子どもの考えがつかみやすくなります。保護者の方向けには、算数のテストと評価のガイドがあります。
インディと練習しよう
Beequation Kidsでは、計算の練習がハニカムパズルになります。お子さまがつまずいたときは、ミツバチのインディがヒントを出します。広告なし、データ収集なし。