保護者の方へ
いまの小学校の算数の教え方
お子さまの算数のノートを開いて、「自分のころとずいぶん違う」と感じたことはありませんか。ブロックの絵、枝分かれした丸、テープのような図、そして「めあて」「まとめ」と書かれた枠。戸惑うのは自然なことです。日本の小学校では、筆算の書き方そのものは昔とほとんど変わっていません。変わったのは、答えを出す前に「なぜそうなるのか」を考え、自分の考えを言葉や図で説明することを、とても大切にするようになった点です。このガイドでは、お子さまが出会う教え方や道具を、おおよそ習う順番に紹介します。学ぶ順番や図のかき方は教科書によって少しずつ違うので、気になるところは担任の先生に確かめてください。
学習指導要領が大切にしていること
全国の小学校の算数は、文部科学省の小学校学習指導要領(2017年告示、2020年度から全面実施)にもとづいて教えられています。授業時間は1回45分で、1年生は週4回ほど、2年生から6年生は週5回ほどです。いまの学習指導要領には、教え方にかかわる大事な言葉がいくつか出てきます。
- 数学的な見方・考え方:数や形に目をつけて、筋道を立てて考えること。たとえば「10のまとまりをつくれば計算しやすい」と気づく力です。
- 数学的活動:身のまわりの場面や算数の中から問題を見つけて解決し、その考えを具体物(ブロックなど)、図、数、式を使って説明する活動です。授業の中心になっています。
- 主体的・対話的で深い学び:先生の説明を聞くだけでなく、自分で考え、友だちと話し合い、考えを深めていく学び方です。
考えることを重んじる一方で、計算の練習を軽く見ているわけではありません。学習指導要領は、筆算などの計算の技能を確実に身につけることも重視しています。わけを理解したうえで、くり返し練習する。その両方がそろって、本当の力になります。
授業の流れ:めあてからまとめまで
多くの学校の算数の授業は、次のような流れで進みます(呼び方や順番はクラスによって少し違います)。
- 問題と「めあて」:先生が問題を出し、「今日は何を考えるのか」をみんなで確かめて、ノートにめあてを書きます。
- 自力解決:まずは一人で考える時間です。ブロックや図、式を使って考えます。答えが出なくても、考えたことを書いておくのが大切です。
- 話し合い:いろいろな考えを発表し合い、「どうしてそうなるの?」「似ているところはどこ?」と比べます。まちがえた考えも、大事な話し合いの材料になります。
- まとめ:今日わかったことを、クラスの言葉で短くまとめます。
- 練習とふりかえり:同じ考え方を使う問題を解き、わかったことや次に考えたいことを書きます。
たとえば3年生の「23 × 3 の計算のしかたを考えよう」という授業では、次のような考えが出てきます。
- たし算で:23 + 23 + 23 = 69
- 位ごとに分けて:20 × 3 = 60、3 × 3 = 9、60 + 9 = 69
- ブロックで:10のぼう2本とばら3こが3つ分。ぼうが6本でばらが9こだから69
そして「十の位と一の位に分けて九九を使えば、九九にないかけ算もできる」とまとめます。この考えが、このあと習うかけ算の筆算の土台になります。ノートに書かれた「めあて」と「まとめ」を見れば、その日の授業で何を学んだのかがよくわかります。
具体物から図へ、図から式へ
新しいことを学ぶとき、算数の授業は「具体物 → 図 → 数と式」の順に進むことが多いです。まず実際に物を動かし、次にそれを絵や図にかき、最後に数と記号だけで考えます。1年生の入学前後に用意する算数セットは、そのための道具です。ブロック、数え棒、おはじき、とけい、計算カードなどが入っています。一つひとつに名前をつける作業は、多くのおうちの方にとっておなじみの大仕事です。
- ブロックと数え棒:10こで1本のぼう、10本で100の板のように、10のまとまりをつくって数を表します。「十の位」がどういう意味なのかが、目で見てわかります。
- 位取り表:一の位、十の位、百の位…と部屋に分かれた表です。同じ3でも、どの部屋に入るかで3にも30にも300にもなります。
- 数直線:1年生から使います。数の大きさや順番、たし算・ひき算の「すすむ・もどる」が線の上で見えます。高学年では小数や分数、割合の問題にも使います。
- そろばん:3年生と4年生では、そろばんで数を表したり、たし算やひき算をしたりします。1年生で100玉そろばんを使うクラスもあります。
図を使うのは低学年だけではありません。5年生が新しい単元で数直線やテープ図に戻るのはよくあることで、遅れているしるしではありません。
1年生:「いくつといくつ」と「さくらんぼ計算」
1年生の大切な単元が「いくつといくつ」です。10を「1と9」「2と8」「3と7」「4と6」「5と5」に分けたり合わせたりします。学校では「10の合成・分解」とも言います。「7と3で10」がわかると、7 + 3 = 10、3 + 7 = 10、10 − 7 = 3、10 − 3 = 7 の4つの式がいっぺんにわかります。たし算とひき算をセットで学ぶのはこのためです。
この力を使うのが、答えが10をこえるくり上がりのあるたし算です。9 + 4 なら「9はあと1で10。4を1と3に分ける。9と1で10。10と3で13」と考えます。数の下に枝分かれした2つの丸をかく形がさくらんぼに似ているので、多くの学校で「さくらんぼ計算」と呼ばれています(教科書の正式な用語ではありません)。
くり下がりのあるひき算では、多くの教科書がまず減加法を取り上げます。15 − 8 なら「15を10と5に分ける。10から8をひいて2。2と5で7」。もう一つの減減法は「8を5と3に分ける。15から5をひいて10。10から3をひいて7」と考えます。どちらも正しい方法です。
家での練習のアイデアはいくつといくつと20までの計算にまとめています。
文章題はテープ図で考える
文章題で「もらった」「ふえた」とあればたし算、「のこりは」とあればひき算、と言葉だけで決めてしまうと、まちがえることがあります。そこで2年生ごろからは、数の大きさをテープの長さで表すテープ図をかいて、どこが全体でどこが部分かを目で確かめます。高学年では、線で表す線分図も使います。
1・2年生は答えを「しき」と「こたえ」に分けて書き、こたえには「27まい」のように単位をつけます。テープ図は、かけ算やわり算、高学年の割合の問題でも活躍します。
筆算:全国でほぼ共通の書き方
2年生からは、数を縦に並べて書く筆算を習います。日本の筆算は全国でほぼ共通で、おうちの方が習ったものと同じ形です。大切なのは、位をそろえて書くこと(一の位の下に一の位、十の位の下に十の位)と、一の位から計算することです。2年生は2けたの数(と簡単な3けたの数)、3年生では3けた・4けたの数へと広がります。教室では、手順を決まった言葉で声に出しながら進めます。
たし算の筆算(2年生から)
3年生で習う3けたの 256 + 178 なら、「一の位、6たす8は14。4を書いて、十の位に1くり上げる。十の位、1たす5たす7で13。3を書いて、百の位に1くり上げる。百の位、1たす2たす1で4」。答えは434です。くり上がった1を小さく書く場所は、教科書によって違います。
ひき算の筆算(2年生から)
くり下がりでは、消した数字に斜線を引き、1減らした数を上に小さく書きます。3年生でつまずきやすいのが、ひかれる数に0がある「0があるくり下がり」です。
「一の位、3から6はひけない。十の位は0なので、百の位から1くり下げて十の位を10にする。そこから一の位に1くり下げる。百の位は3、十の位は9、一の位は13。13ひく6は7。9ひく5は4。3ひく1は2」。答えは247です。
ひき算の答えが出たら、たしかめ算をすすめてください。答えにひく数をたして、ひかれる数にもどれば正解です。403 − 156 = 247 なら、247 + 156 = 403。学校でも習う方法なので、お子さまも取り入れやすく、自分でまちがいに気づけるようになります。
かけ算の筆算(3年生から)
2年生で九九(1 × 1 から 9 × 9 まで)を覚えると、3年生では2けた・3けたの数のかけ算を筆算でします。日本の書き方の特徴は、2だん目の答えを1けた左にずらして書き、最後の0は書かないことです。
まず 46 × 7:7 × 6 = 42 の2を書いて4をくり上げ、7 × 4 = 28 に4をたして32。これで322です。次に 46 × 2:2 × 6 = 12 の2を書いて1をくり上げ、2 × 4 = 8 に1をたして9。これで92を、1けた左にずらして書きます。最後に 322 + 920 をたして1242になります。
わり算の筆算(4年生):「たてる・かける・ひく・おろす」
わり算は3年生から始まります。最初は「23 ÷ 4 = 5 あまり 3」のように、九九を1回使えば答えが出る計算です。4年生になると、大きな数のわり算を筆算でします。わる数を左に、わられる数を右に書き、商はわられる数の上に書きます。そして「たてる → かける → ひく → おろす」をくり返します。日本の筆算では、途中のかけ算とひき算の答えも省かずに全部書きます。
声に出すとこうなります。「7 ÷ 3 で2をたてる。3 × 2 = 6。7 − 6 = 1。4をおろして14。14 ÷ 3 で4をたてる。3 × 4 = 12。14 − 12 = 2。5をおろして25。25 ÷ 3 で8をたてる。3 × 8 = 24。25 − 24 = 1」。答えは 745 ÷ 3 = 248 あまり 1 です。「わられる数 = わる数 × 商 + あまり」でたしかめると、3 × 248 + 1 = 744 + 1 = 745 で、合っています。
わる数が2けたになると、「だいたいこのくらい」と仮の商をたて、大きすぎたら1小さくして直します。直すのはまちがいではなく、大切な手順のひとつです。くわしくはかけ算とわり算の単元をご覧ください。
1人1台の端末(GIGAスクール)
2021年ごろから、小学校では子ども一人ひとりにタブレットなどの端末が配られています(GIGAスクール構想)。算数の授業では、自分の考えを画面に書いてクラスで見せ合ったり、ドリルの問題に取り組んだりします。宿題を端末で出す学校もあります。それでも、筆算を紙に書き、ノートに考えを残す学習は、いまも授業の中心です。
なぜこのように教えるのか
- わけがわかると、忘れにくい:くり上がりの1が「10のまとまり」だとわかっている子は、手順だけを覚えた子よりも、まちがいに気づきやすくなります。だから授業では、いきなり筆算の手順を教えるのではなく、ブロックや図でしくみを考えてから筆算に進みます。
- 説明する力が求められる:6年生の4月に行われる全国学力・学習状況調査でも、答えだけでなく、わけを言葉や式で書く問題が出ます。成績や進学には関係しない調査ですが、学校がこの力を大切にしていることがわかります。
- 練習も、やはり大切:計算カードや九九の暗唱、筆算のくり返しで計算が確かになると、頭の中に考える余裕が生まれます。
- まちがいも学びの材料:話し合いでは、まちがえた考えから「どこで分かれたのか」を考えることがよくあります。「まだできない」は、「これからできるようになる」ということです。
お子さまの算数のノートを見たら、答えの丸の数より、「めあて」と「まとめ」に目を向けてみてください。「今日はどんなことを考えたの?」「友だちはどんな考えだった?」と聞くと、お子さまが先生役になって話してくれます。説明することで、学んだことがしっかり身につきます。
よくある質問
筆算の形は昔とほとんど同じなので、安心して見てあげてください。ただ、宿題では学校と同じ言葉や手順を使うほうが、お子さまが迷いません。くり下がりの考え方(減加法か減減法か)や、くり上がりの1を書く場所などはクラスによって違うので、まずお子さまに「学校ではどうやってるの?」と聞いてみましょう。
図は、答えを出すためだけでなく、考えを人に伝えたり、むずかしい問題を整理したりするための道具です。テープ図や数直線は、高学年の割合や分数の問題で大きな助けになります。今のうちに図をかくことに慣れておくと、あとでとても役に立ちます。
多くのクラスでは、文章題の式を「1つ分の数 × いくつ分」の順に書く学習をします。答えの数は同じでも、式が場面をどう表しているかを考えることが、その授業のねらいだからです。気になるときは、家で直してしまう前に、連絡帳や個人面談で担任の先生にクラスの考え方を聞いてみてください。
お子さまの教科書とノートを見るのがいちばんの近道です。授業参観で実際の授業を見たり、個人面談で担任の先生に聞いたりするのもよいでしょう。教科書は市区町村などで選ばれていて、地域によって違います。ノートに出てくる図や言葉が、そのクラスのやり方です。
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